2008年3月11日火曜日

ご挨拶

 長らくご愛読いただきました「踊る大ハリウッド」も、このへんでいったん終了とさせていただきます。

 平成18年10月からの一年半にわたり、さまざまなご声援、ご意見を頂き有り難うございました。当初からたいした計画もなく、日頃ビデオやDVDを見て考えたことを文章にできればと軽い気持ちで始めたものです。しいて言えばジーン・ケリーで始めてアステアで終われればよいと思ったことが計画といえば計画なのかもしれません。そう言う意味では最後に何とか平仄を合わせ、形だけは首尾一貫することができました。

 勝手なことを書いているようですが、これでも資料を読んでまとめるのはなかなか大変なことです。とくにミュージカルに関する重要な著作はほとんど英語なので、私の英語力では時間がかかって負担になります。そういうことも含めこれからしばらく勉強しなおしたいと思います。

 今から十五年くらい前なら、ネット上で自分の考えを公表するなど夢にも考えなかったでしょう。自分の頭の中だけで消えてしまうはずのことが、少数であれ人様の目に触れる機会を作れたというのも時代の幸運かもしれません。一年半の年月のわりに大した分量ではありませんが、一般には語られていないようなことも書け、自分で読んでもなかなか面白いと自画自賛できたのがわずかな救いです。

 また何かの機会に書き始めることもあるかもしれませんが、ひとまずここでお別れをさせていただきます。


ではいずれまた。


OmuHayashi 


4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

OmuHayashi様、とてもすばらしい内容、ありがとうございました。1970年代の始めの頃小林信彦の『われわれはなぜ映画館にいるのか』(晶文社)を繰り返し読みながら、ぜひ見たいと熱望していたMGMの『バンド・ワゴン』やその他のミュージカル映画をわたくしが、自由に見られるようになったのはごく最近のことです。だから双葉十三郎の
『ミュージカル洋画 ぼくの500本』も
出版されたのだと思います。その小林や双葉の語っていない観点から分析なさっているOmuHayashiの文章は、「驚き」の一語でした。少しお休みになって、また別な形で再開していただくとうれしいです。というのは、わたくしは『四十二番街』などで活躍したというルービー・キラーという女優さんをいつか取り上げていただきたい、と思っているからです。それでは。

匿名 さんのコメント...

小澤博幸さん、今晩は。

 私も小林信彦のエッセイや批評はかなり読んでいますが、何と言っても一番影響を受けたのは「日本の喜劇人」です。

 それまで子供の頃からテレビでさんざん楽しんでおきながら「くだらないもの」として記憶の片隅に押し込めていたものに光を当て、評価し、系統づけられたことは、私の中ではまさにコペルニクス的転換でした。
 今でも古川ロッパが表紙の初版が並んだ書店の光景まで頭に浮かびます。

 ビデオもそうですがDVDが出現して「映画の批評や評論もずいぶん変わるんだろうなあ」と漠然と思っていたのですが、よく考えたら自分の書いているものがまさにそれだというのに気が付きました。

 今まで自分の趣味や興味の対象がいくつか変わっています。本来それぞれ別個のものだったのに、それぞれで学んだことが「踊る大ハリウッド」に集約されているのを見ると、利用しているインターネットやDVDの出現という時代も含めて、偶然というにはなにか不思議な気がします。

 また書き始めるのかもわかりませんが、そういう機会がありましたら、そのときはまたよろしくお願いします。

 ご愛読ありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

興味深い解説、本当にありがとうございました。毎回、楽しみに読ませていただいていたのでとても残念です。

私も、アステアやケリー、その時代のミュージカルに、現代、どれほどの人が興味を持っているのか疑問でした。でも、好きになってかかわればかかわるほど、今だに多くの人が愛していることを知りました。決してダンスに興味のある人だけに訴える魅力ではなく、すべての観客にアピールする普遍的な魅力…。当時のダンサー&ミュージカルの世界観は、もう成しえないのかもしれませんね。

本当にありがとうございました!
(また再開されることを願って…。)

匿名 さんのコメント...

TAKKOさん、今晩は。

 いつも暖かいコメントをいただきありがとうございました。
 こういうものを書いて初めて、自分の考えたことに人様から何らかの反響があることの有り難味がよくわかりました。

 書こうと思いつつ結局書く機会がなく終わってしまったことに、「ミュージカルコメディの復権」があります。

 現代のミュージカルは暴力も、ホモセクシャルも殺人も描けるほど題材の幅が広がり、制作技術も進歩し、ダンサーの平均的な能力も昔より向上しています。でもある意味、アステア=ロジャースの魅力を超えることができない。スター個人の力と共に、映画に現れる世界自体が観客をやさしく包みこむミュージカルコメディの暖かさが大切だといまさらながらに思うのです。
 
 でもこういうものは、時代が支えるものなので、今作ったところでうそっぽく見えて上手くいかないでしょう。
もう、そういう時代ではないのです。だからこそ、昔のミュージカル映画の魅力が輝き続けるのだと思います。

 
 また何かの機会に言葉を交わすこともあるかもしれませんが、今回はこれにて失礼いたします。