棒が腕の延長上にある骨と意識され、さしたる違和感もなく使いこなすことができるでしょう。
ドラムのスティックです。
「踊る騎士」(1937年)の"Nice Work If You Can Get It" や「イースター・パレード」(1948年)の”Drum Crazy”で演じられるアステアのみごとなバチ捌きをご覧ください。
次は腕です。

「有頂天時代」(1936年)から”Bojangles of Harlem”
小さくて見づらく、もうしわけない。
肘や手首で加速しながら、それぞれの関節で連結された上肢がクランク状の運動を行っています。このとき腕全体が完全に脱力され、肩甲骨が滑らかに動くため、一見、腕に骨がないかのように波打って見えます。
骨で動きながら柔らかく見えるというパラドックス。
写真一枚ではわかりにくいので、DVDで確認してください。

こちらは肩甲骨から動き、腕全体を前に放り出すような動きです。肩甲骨の滑らかさと可動域の広さが確認できます。
さて肩甲骨がリラックスしてこれだけ滑らかに動くと、その動きは骨盤に伝わり下半身を動かしていきます。(このように肩甲骨を駆動力とする動きは、最近ではマラソンの走法にも利用されているようです。)
この動きを使いこなしているとどうなるか。
詳細については避けますが、人体の正中面(中心軸を通り体を前後方向に通る面)に沿って右半身と左半身が独立に回転するような感覚が生まれます。
正中面がツルツル滑るガラス板だと想像してみてください。その表面に沿って右半身と左半身が別個に図の矢印のように回転していくのです。

アステアが浮き浮きしたときに見せる、まるでスキップでもするかのような歩き方はこの動きから生まれて来ます。

「踊る騎士」終盤、"Nice Work If You Can Get It"
ドラムを叩き終えたアステアはいかにも愉快そうに、軽々と歩き出します。その数秒をキャプチャーしてみましたが、写真では浮遊感がとらえらきれません。
ぜひ動く映像で確認して下さい。

おまけ
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