2008年2月27日水曜日

フレッド・アステア その13 「ジンジャー 2」

 お次はこれを。

 ジンジャーの顔をよく見ていただきたい。

 この人の顔のRKO時代の特徴は二つある。

 重く覆いかぶさるように降りてくる上まぶたと、少し苦いものを味わっているかのようなその口元である。そういう表情なのだと言ってしまえばそれまでだが、実はこれが彼女の身体を規定する大切な要素になっている。

 一般に意識されることは少ないが、顔の動きは体幹部の動きとつながり、相互に影響し合っている。顔の動きは全身の力の分布を決定し、ジンジャーの身体の特徴を作り出す。

 ためしに舌全体を上顎(口腔内の天井である)にべったりと付け、少し苦いものを味わうつもりになってみてほしい。横隔膜が適度に緊張するのがわかる。さらに上まぶたが普通の何倍も重くなってゆっくり下りてくるつもりになってみてほしい。緊張した横隔膜に更に上から力がかかってくる。これがジンジャー・ロジャースの身体イメージである。

 つまり、彼女には常に、みぞおちから腹にかけて重みがかかり、気持ちが上ずると言うことがない。力は常に下方へと流れる。上半身の力が抜けみぞおちから腹に重心の落ちたその体は、柔らかさと共に、観客に信頼や明確な意思の存在を直感させ、スクリーン上の彼女のイメージを形作る。

 第二の特質である。


これがアステアと並ぶと、

 常に上方にベクトルのかかるアステアと、下方に力が流れるジンジャー。相補って非常にバランスが良い。

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