2010年1月3日日曜日

ジュディ・ガーランド その4 「のびやか」

 さてこのあたりで、この時期のジュディ・ガーランドについて考えてみましょう。

 「オズの魔法使い」までを、私は彼女のMGM在籍期の最初の区切りと考えています。

 年齢にして13歳から16歳(撮影時)。

 変わると言えば一作ごとに変わっているのかもしれませんが、まだ本来の太り気味の体型で、顔つきも快活な少女らしさを残しています。精神的にも安定し、撮影時のトラブルも起こしていません。また、ようやく人気が高まり撮影所内での地位も安定し始めた時期で、その後に比べ初々しい印象があります。


















Everybody Sing” (1938) から”Swing Mr.Mendelssohn”

 メンデルスゾーンの歌曲をスウィング風に歌い出し、教室をつまみ出されるばかりか、放校になってしまいます。彼女のコメディーセンスの良さがわかるシーンです。


 さてここで見ていただきたいのは彼女の立ち姿です(と言ってもあまり良い場面がキャプチャーできませんでしたが・・・)。

  しっかり足と腰で地面をとらえています。とらえた力は横隔膜を通してのびやかに上昇し、明るい歌声となって響きます。この大地からの力を素直に吸収しあくまでのびやかに響く歌声が、その明るい質感も含めこの時期のジュディ・ガーランドの他に換えがたい魅力です。

 主声域は声の重心が安定したままで上下に伸展していきます。この声の「伸び」は他の歌手と隔てるジュディならではの重要な特性の一つです。この後、成長に従い彼女の歌声は上方より下方への伸びが主になっていきますが、この時期はまだ上方への伸びが主です。そのため大人になってからに比べ歌の深みにはいささか欠けるものの、この年齢にふさわしい明るく素直なおおらかさが表現されるのです。


 さらに後の時期と比べ主声域が横に広い(あるいは副声域が力強い?)ため、体幹部の広い範囲を使って声が出ています。その結果としての声の豊かさは、声自体が持つ高いエネルギー密度も相まって、三十代や四十代よりかえって勝っているように感じられます。

 後の身体的衰えを考えると、「成長と共にだんだん上手くなりました」という一般論ではくくれない早熟の天才ならではの問題が、彼女の歌唱には隠されているのです。


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