2011年9月21日水曜日

杉村 春子 その1

 突然ですが、杉村春子 先生であります。

 こういう希有な演技者の身体はどうなっているのか、一度書いておきたいと思ったことが理由と言えば理由なのですが、書いたからと言ってそれが誰かの役に立つのかどうか・・・・・・。
まあ、「私はこう考えています」と言ったところで、ご勘弁を願いたいと思います。

 杉村春子の舞台を私は見たことがありません。テレビに出ている姿は知っていますが、出演作を丹念に追いかけるようなファンでもありません。残りの知識と言えば、脇役として出演する昔の日本映画程度しかありません。その名声は確立され、今さら「大女優」だの、「名演」だの、ことごとしく言い立てる必要もない。そういう存在でありました。

 ところが5月、たまたま衛星放送で伊藤大輔の「反逆児」(1962)を見て、「ヘェェェー」と驚かされたのです。そこに現れた杉村春子の演技は、これまでTVや映画で見知っていたものとは異なっていたからです。













 彼女演じるは、今川義元の姪であり、かつ、信長に切腹を命ぜられる松平信康(中村錦之助)の母---築山御前 。名家に生まれた矜恃と時の流れに翻弄される屈辱を、傲岸と息子への偏愛の中に浮きたたせる演技は、普段見知った「市井の人」を演じる際のそれとは質を異にしたものでした。これまで知っていた彼女の出演作をさしずめ「世話物」とすれば、「反逆児」は「時代物」。その時代物らしい大仰さの中に、時と人間が切り結んだ瞬間の火花を杉村春子の身体が見事に表現していたのです

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