2010年6月26日土曜日

レスリー・キャロン 自伝 その11 「土曜の夜は」

 「土曜の夜はノース・ロデオ・ドライヴのジーン・ケリーの家でくつろぐことになっていました。夕暮れ時になると正面玄関のドアが開かれ、ブロードウェイやヨーロッパから集まった俳優、歌手、エンタテイナー、脚本家、監督らがやって来ます。」

 「飲みたい人は勝手にバーで飲み、何か演じたい人は順番に。音楽監督のソール・チャップリンがピアノでガーシュイン、コール・ポーター、ジェローム・カーン、ロジャース&ハートやハマースタインの曲を弾きますが、どの歌の歌詞も誰もが知っていました。

 ベッツィー・ブレアは熱心に歌うものの、調子っぱずれ。ジーンがやるのはアイルランド人の決まり事---ウイスキーとおしゃべりです。スタンリー・ドーネンは周囲のやかましさにおかまいなく、ソファでぐっすりと寝込んでいます。レナ・ホーンは夫と来ていましたが、即興には加わりませんでした。」

 「オスカー・レヴァントは彼と私の顔が似ていると言って皆を笑わせ、アドルフ・グリーンとベティ・コムデンはいつも顔を出しては、ニューヨークのショーにかけるコントを見せてくれました。『雨に唄えば』という退屈な歌をもとにストーリーを作らなくてはいけない苦労を、毎週のように愚痴っていたのを思い出します。」

 「その歌の作者アーサー・フリードは皆から愛され、尊敬もされていましたが、彼のつきあい下手はいつもジョークのネタでした。恥ずかしがり屋で容易に人と交わろうとしなかったのです。テキサスから来たショーガールなどには目もくれず、彼の秘めたる情熱は蘭に向いていました。自宅には大きな温室があって、アメリカでも有数の蘭の栽培家だったのです。」


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