2010年6月18日金曜日

レスリー・キャロン 自伝 その7 「MGM」

 スタジオに通い始めたレスリーは、まるで一つの町のようなその規模と設備に驚き、撮影所の様子やしきたりについて語っています。


 MGMには三つの門があります。一つは彼女が電気設備の労働者らと一緒に通っていた裏門。二つ目はスターがエグゼクティヴ用の駐車場に車を止め、歩いて入る正門。そして三つ目は日雇いの俳優やエキストラ、事務職員らが入る門です。

     「ハリウッドでは序列が尊重されていました」 

 撮影所内には、主役級の俳優や大切な客を運ぶため、いつも黒塗りのリムジンが待機していました。セカンド・アシスタントは常に彼らがどこにいるか(セット、衣装、メークアップ、結髪、食堂等々)を記録しますが、この記録が撮影所の運営を円滑にするために大切だったようです。

 ビルの最上階には、撮影所のトップの人々しか入れないダイニングルームがあり、最上級の美人ウエイトレスが接待をします。ここは一種の聖域で、俳優が入ることは滅多にありません。

 俳優は食堂で食事をとることになっていました。食堂は一種のキャスティングの場にもなっており、監督、プロデューサー、エージェントにとっても顔を出しておいたほうが良いところでした。

 さらに食堂は噂話が行き交う場所でもあります。

     「今朝、誰それが遅刻したので撮影が遅れた」

     「誰それは太った」

     「昨夜モカンボであの女優が誰それの旦那と一緒だった」

などというゴシップが行き交います。


 レスリーは毎日決まったように、半ポンドのハンバーグステーキとサラダとデザートのゼリーにコーヒーを三十分かけて食べていました。食べ終わると自分のトレーラーに飛んで帰り、三十分の昼寝をします。

 一般社員用のカフェテリアにもよく行きましたが、いつももう一人女優が来ていて、皆と気さくに食事をとっていました。

 エヴァ・ガードナーです。


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