2010年6月20日日曜日

レスリー・キャロン 自伝 その9 「ジーン・ケリー」

 彼女はケリーについて多くの言葉を費やしています。


 「 ジーン・ケリーは素晴らしいダンサーで完璧なリズム感をもっていましたが、そればかりではありません。頭が良くて、リーダーの資質に富み、実際に皆を指揮するのも好きだったのです。

 パートナーの能力を推し測り、どうすればその魅力を最大限に引き出せるかを知っていました。映像の構成力にすぐれ、カメラが動くとどう映るかもわかっていました。撮影機器の技術的な側面にも詳しい知識を持っていました。」

 「 振り付け家として創造性に富み、斬新で、ダンサーというよりむしろスポ-ツマン的な面が強かったと思います。彼が求めていたのは優雅さではなく、今を生きる者の肉体表現だったのです。

 カッとしやすいところもありましたが、同時にフェアで、抑えた態度で良いところを指摘してくれました。悪い部分の指摘は鋭く、直截的で、何らの言い訳も許しません。彼の叱責をスタジオ中の誰もが恐れていました。」

  「幸いなことにリハーサルのほとんどは二人のアシスタントによるものでした。彼の言動は人を励ますものでしたが、ジーンの前ではたぶん私は自信を失っていたことでしょう。」


 冷房のない当時、夏になるとリハーサル室は灼熱地獄のようになりました。

 「それでもまるで工場労働者のように8時間そこにいないといけませんでした。自分の仕事が終わりいつ帰っても良いような時であっても、ジーンは良くこう言っていたものです。

 『何時に仕事に入り、何時に帰宅したか記録されている。それで8時間。そうやってスタジオは動いているんだ』」


 ある朝遅刻したレスリーはケリーから注意されます。

「どうしたんだ、目覚ましが聞こえなかったのかい」

「ごめんなさい、私・・・・・・・・目覚まし時計を持ってないんです」

「持ってない? あのね、言っておくけど戦争は終わったんだよ、お嬢ちゃん。そのへんのドラッグストアにいけばすぐ買えるんだよ」

 この言葉をきっかけに彼女は、フランスでの経験にとらわれた考えを脱し、アメリカにある無限の可能性に気づいていくのです


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